再開した有機化学の勉強ですが、合成高分子化合物の単元に入りました。
反応の種類ごとに合成化合物を勉強しているのですが、いくつか馴染み深い樹脂が出てきました。
樹脂は建材としても多く使われていますので、ここでまとめておきます。
- そもそも樹脂とは?プラスチックと違うの?
- 熱硬化性樹脂と建築現場でどう使われているのか
- 美しい!メラミン樹脂
- 影の立役者!フェノール樹脂
- お手軽?!尿素樹脂
- 万能!エポキシ樹脂
- 暖かく、柔らかい!ウレタン樹脂
- 強い!シリコーン樹脂
- まとめ 感想
そもそも樹脂とは?プラスチックと違うの?
樹脂製品は私たちの身の回りにあふれています。
でも、そもそも樹脂って何でしょう。
「要はプラスチックのことでしょ」と考えているのは、わたしだけではない、ですよね?💦
一般的な理解としてはそれでもいいと思うのですが、正確な定義としては違うようです。
「樹脂」の本来の意味を簡単に言うと、「植物から分泌される油」の総称のことだそうです。
漢字そのままですね。
ところが有機化学の発達により、樹脂とよく似た性質を持つ物質が人工的に作られるようになりました。
それが「合成樹脂」です。
そして合成樹脂と区別するため、植物や動物由来の樹脂のことを「天然樹脂」と呼ぶようになりました。
「プラスチック」とは、一般的に「合成樹脂」のことを指します。
ただし、「プラスチック」という言葉は技術的な用語ではなく日常用語のため、文脈によって定義が揺れることがあるようです。
出典:【プラスチックの種類と特徴】樹脂基礎│樹脂製品開発のための必須知識 – 二幸技研 ガラスナイロン注型 プラスチック加工 (nikougiken.jp)
人工的に作られる合成樹脂は二つの種類に分かれます。
出典;【プラスチックの種類と特徴】樹脂基礎│樹脂製品開発のための必須知識 – 二幸技研 ガラスナイロン注型 プラスチック加工 (nikougiken.jp)
熱硬化性樹脂は再び加熱しても柔らかくなったり、形状が変わったりしません。
そのため耐熱性や構造的強度が求められる用途に適しています。まさに建築材料にもってこいですね。
ということで、「熱硬化性樹脂を使った建築材料」についてその特徴と用途を調べてみたいと思います。
熱硬化性樹脂は建築分野でどう使われているのか
美しい!メラミン樹脂
トップバッターはやはりメラミン樹脂です。メラミン化粧板として、建築意匠に貢献する代表選手です。
メラミン樹脂の材料はメラミンとホルムアルデヒドです。
この2つの単量体(モノマー)を縮合重合させて製造された重合体(ポリマー)がメラミン樹脂です。
耐久性、耐熱性に優れていて、高い強度を示すため、多くの日用品に使用されています。
例えば、メラミン樹脂スポンジ。皆さん一度は使ったことがあるのではないでしょうか。
あの、洗剤の要らない食器たわしです。
研磨剤効果を持つので、洗剤を使用しなくてもがんこな汚れを落とすことができます。湯呑やマグカップについてしまった茶渋落としにも有効です。
またメラミン樹脂は、電気絶縁性や機械強度にも優れているため、電気部品の基盤やケースにも用いられています。
建築材料としては、メラミン化粧板が有名です。
家具やカウンターなどの表面材として幅広く使われています。
メラミン化粧板の特徴は、硬質で傷がつきにくく、熱や水にも強い、大変丈夫な材質であるという点です。
汚れがつきにくく、ついても拭き取りやすいのも大きなメリットですね。
それからなんといってもデザイン性が魅力です。
多種多様なカラーや、木目調、大理石風など風合いの表現も非常に豊富です。
さらに加えて、抗ウィルス性や指紋レスなど様々な機能を付与することも可能です。
メラミン化粧板の断面。表面にメラミン樹脂を含有させた紙を何層か重ね、高圧でプレスする。
出典:メラミン化粧板とは【HUSTNET】
デザイン性の高いメラミン化粧版
出典:メラミン化粧板に2023年新柄を追加 | アイカ工業株式会社 (aica.co.jp)
影の立役者!フェノール樹脂
フェノール樹脂は、世界で初めて人工的に合成された樹脂です。
フェノールとホルムアルデヒドを縮合重合させて製造します。
耐熱性、絶縁性、難燃性に優れているため、例えば鍋の取っ手などの調理道具や、電気製品に多く使われています。
実は先ほどスルーしましたが、フェノール樹脂は、メラミン化粧板にも使われています。
上のメラミン化粧板断面をもう一度見てください。
表面のデザイン紙の部分はメラミン樹脂を使っていますが、コア層をよーく見てみると、フェノール樹脂を含浸させています。
1940年代にメラミン化粧板が普及する前までは、フェノール樹脂を使った化粧板が使われていたそうです。
ただしフェノール樹脂は黄色味を帯びているため、当時の化粧板はキャラメルブラウン色しかなかったのだとか。ちょっと寂しいですね。
また化粧板以外にも、フェノール樹脂の熱伝導率の低さ、耐水性、難燃性を生かして、断熱ボードとしても多くの製品が普及しています。
お手軽?!尿素樹脂
お次は尿素樹脂です。
尿素とホルムアルデヒドを縮合重合させて製造します。
成形が容易で比較的安価なため、身の回りの多くの製品に使われています。
また無色透明で着色が容易であり、光沢もあることから、象牙の代用品となることもあるようです。
麻雀牌の質感を思い出してみてください。
あれが代表的な(?)尿素樹脂製品です。(もっと身近なのないかな💦)
尿素樹脂はフェノール樹脂などと比べると耐久性に劣るので、建材というより接着剤として使われることが多いようです。
よく使われるのは、合板を作る際の接着剤としての役割です。
出典:https://www.store-express.com/shop/pg/1column37/
万能!エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、今までの縮合重合と違う方法で製造されます。
エポキシ基を持つモノマーをポリマーに変える途中の段階で中間体(プレポリマー)ができます。
その中間体に様々な硬化剤を混合して、エポキシ樹脂を作ります。
硬化剤の種類によってさまざまな性質を持たせることができるため、エポキシ樹脂の機能・用途は幅広い分野に渡っています。
まず、エポキシ樹脂はコンクリート補修材として有能です。
粘度を変えることで、深く広いひび割れはもちろん細かいひび割れにまで浸透させることができます。
また、塗床材としても多くの製品が作られています。
コンクリートに対して密着性が高く、塗膜が硬いため、工場やフォークリフトが通行する倉庫などによく使われています。
また、耐薬品性にも優れているため、研究室や実験室の塗床材としても適しています。
出典:ケミクリートE(厚膜型エポキシ樹脂系塗り床材) | ABC商会 (abc-t.co.jp)
暖かく、柔らかい!ウレタン樹脂
ポリウレタンとも呼ばれます。
ウレタン結合(―NH・CO・O-)を有するポリマーの総称で、通常イソシアネート基(―N=C=O)とヒドロキシ基(―OH)を有する化合物の重付加によって生成されます。
合成にはカルボキシ基(―COOH)やアミノ基(―NH2)などほかの官能基も併用することができるため、多様な性質を持った化合物を作りだすことができます。
断熱材として、ウレタンフォーム(発泡ウレタン)がよく使われています。
発泡ウレタンは、微細な気泡の中に熱伝導率が極めて小さいガスが含まれているため、断熱性能に優れています。
また、熱や水蒸気が浸入しにくく、耐水性・耐湿性に優れた効果を発揮します。
ただし、燃えやすいという弱点があります。
それからプラスチックなのでシロアリに食べられるという点もデメリットです。
シロアリ発生の恐れがある場所では防蟻処理が必要です。
出典:https://www.e-lifetech.com/blog/3534/
また、ウレタン樹脂は塗床材としてもよく使われます。
前述のエポキシ樹脂との主な違いは硬さです。
ウレタン樹脂のほうが柔らかく、歩くときの衝撃を和らげてくれるので、廊下や店舗の床などによく使われます。
また、その弾性、柔軟性の高さから、ひび割れに追従する性質を持っていて、床のクラックが発生しにくい点もメリットと言えます。
臭いも少なく、乾燥時間も短くて済むなど、施工性にも優れています。
強い!シリコーン樹脂
最後にシリコーン樹脂です。
金属ケイ素(Si)と塩化メチル(クロロメタンCH3CL)を加熱してできるシラン類を、加水分解と脱水縮合させて製造します。
シラン類の配合、重合度や置換基などの違いによって、様々な形態を作ることができます。
特徴は、一般に無色・無臭で撥水性を持ちます。
また樹脂の中では耐熱性が高いため利便性が良く、シリコンゴムやヘアスプレーなどのオイル、コンタクトレンズなどに使われています。
シリコーン樹脂はコーキング剤としてよく使われています。
コーキングとは、施工の際にできる隙間を埋める作業で、建物の気密性、防水性を高めるためになくてはならないものです。
コーキング剤にも様々な種類があるのですが、シリコン系コーキング剤は特に耐水性、耐候性、耐熱性に優れているため、浴室やキッチンなどの水回りや、外壁の補修などにも使われます。
出典:https://www.sharpchem.co.jp/caulking/Indoor-Caulking-agent-suitable-for-interior.html
まとめ 感想
今回記載したのは樹脂のうちほんの一部の種類です。
同じ官能基を持つモノマーの組み合わせでも、反応のさせ方や付加するほかの化合物の組み合わせで様々な性質を持たせることができ、使用される分野は多岐に渡っているということが理解できました。
そしてやっぱりホルムアルデヒドは便利なんですね。
以前の投稿でも記載しましたが、ほかの化合物の官能基と反応してポリマーを生成しやすいので、樹脂の原料として多く使われていることが改めて分かりました。
となるとやっぱり気になるのがシックハウス症候群です。
今回調査した建築材料のホームページを見ると、ほとんどの材料がホルムアルデヒドの気中放散量に関してF☆☆☆☆を取得していました。
つまり体への悪影響をきたすレベルの放散量はない、と考えられています。
うーんでもこれだけ使われているとなるとちょっと気になる。
以前の投稿後に、「ホルムアルデヒド発散を抑制する建材」に関しての特許明細書を読んでみたのですが、改めてもう一度読んでみようと思います。
以前とまた違った気づきがあるかもしれません。
それも含めてまた後日書きたいと思います。